
今も昔も学術論文を読むことは、勉強する第一歩です。少し前までは、夜な夜な図書室で文献をコピーすることから始まりました。しかし、現在ではインターネットが普及したことに加えて、学術論文の著作権に関する取扱が変化してきています。学術雑誌に掲載されている論文は基本的に、その学会に著作権が譲渡されることが明文化されています。商業誌の場合は、出版社へ著作権譲渡の書類を提出しなければなりません。インターネットで著作権のある論文を公開することは、「公衆送信権」にあたり、著作権権利者による許可が必要になります。しかし、インターネットから全文をダウンロードできる学術論文も多くなってきました。このように、だれもが自由に閲覧することができる論文をオープンアクセスと言います。考えてみれば論文の著者は、より多くの人から自分の論文を読んでもらうことに意義があり、それを出版社が著作権譲渡で制限してしまっていては、せっかく論文を書いたのに・・・といったことにもなってしまいます。この流れは世界的な流れであり、今や英語論文を集めるのにはそんなに苦労しなくても良くなってきました。現在、日本でも科学技術振興機構や大学機関が積極的にオープンアクセスを進めています。
日本理学療法士協会でも、協会誌である『理学療法学』は、出版後1年を経過すればオープンアクセスになっています(日本理学療法士協会のホームページから入手できます)。この他にも、理学療法科学学会の学会誌である『理学療法科学』は、実質的なオープンアクセスになっています。『理学療法科学』に論文投稿すると、掲載される際には掲載料が必要になります。正直、「商業的だなあ」と思っていました。しかし、オープンアクセスの意義を理解すれば、著者が得られるメリットが最も大きいため、掲載料とした自己負担は極当然であるように思えるようになりました(オープンアクセスにすることによって、参考文献にされる機会が増えます。実際に理学療法科学学会が出版している英語版の理学療法科学雑誌『Physical therapy science』には、海外からの投稿も増え、インパクトファクターがついたようです)。この他にも、様々な学会や大学、企業の助成金に伴う研究はオープンアクセスになっていることが多いです。
このオープンアクセス論文は、養成校を卒業してからの卒後教育を行っていくうえで非常に有用です。就職してしまうと、毎日の臨床の多忙さに追われ、自主学習する時間は限られたものになってしまいます。そうなると、ついつい自分の興味のある分野のみの勉強に偏ってしまいます。これは、実際の臨床場面におきかえると、自分の興味のある、もしくは得意な分野の疾病なら診れるが、それ以外は診れない状況を自ら作り上げてしまっていることに他なりません。経験年数が少ないときこそ、積極的に様々な文献にあたってほしいと思うのは、部下を持つものとしては共通する思いなのではないでしょうか。
私が就職したばかりのころ(15年以上前ですが・・・)は、当然インターネットも普及しておらず、論文と言えば、医学書院の商業誌や日本理学療法士協会の協会誌である『理学療法学』しかありませんでした。オープンアクセスの魅力の一つは、自分の専門分野ではない学術分野の論文を簡単に入手できるようになることです。これにより、理学療法学と隣接する医学や看護学、工学、体育学などの研究論文を読むことができるようになりました。それにより、隣接学会がどのような現状にあり、どのような研究を行っているのかを知ることができます。しかし、隣接する学会の論文を読み解くには、それなりの知識が必要となります。また、このオープンアクセスですが、情報が過多になるという反面を持つことになりました。現在では、逆に情報がありすぎて、勉強しにくくなっているのかもしれません。
これらのことを踏まえて、卒後教育にオープンアクセスを利用するには、論文の選択およびそれに関する簡単な解説を付けることで、問題をある程度クリアーすることが可能になると考えています。